覆面作家企画6・Eブロックの感想

  • 2014.10.18 Saturday
  • 19:17
 覆面作家企画6、Eブロックの感想です。ネタバレしてます。
 読み違え等あるかも知れません。えらそうなことを時々言ってますが、なに戯言言ってんだこいつということでご寛恕ください。
E01 生きてさえいれば
 異世界引きこもりファンタジーとは珍しい。と思ったら、あれ? 引きこもりの「あたし」はラストの「あたし」とは別人? 「おしまい」以前は劇中劇だった、という解釈でいいでしょうか。
引きこもりの「あたし」が危機感を持ったのが、食事が出なくなってからと、それでも部屋を出られなかったというのは、真の引きこもりのような……いや、よく知らないんですけどね。

E02 キドニーパイをひとくち
 お腹空いている時に読むとますますお腹減ること請け合いのおいしそうなお料理満載のお話でした(実際空腹時に読んだ)。この春、20世紀初頭の英国貴族のお屋敷を舞台にしたドラマ『ダウントンアビー』を見たんですが、脳内映像はそのドラマの中の厨房でした。いや、ドラマよりも描写がより細かく丁寧でした。情景が目に浮かぶようです。お腹がますます空いてきます。どの料理もおいしそうで、食べてみたい! アンとマギーみたいな二人を部下に持つミセス・ストーの苦労がしのばれるなあ。まわりも大変だろう。
 ミセス・ストーがミドルトン家が好きで、そこでずっと働きたいという思いは読む者にもとてもよく伝わってきて、でも自分の店を持ちたいという夢を完全には諦めていないというのも分かって、背中を押してくれる人もいるし、ミセス・ストーが数年後、どこでどんな風に働いているのかが気になる。

E03 火を目指して飛んでいけ
 関西周辺の方言なのかな、くらいしか分からなかったから、これを書いた人がネイティブなのか調べて書いたのかも分からんYO! 思春期の女の子の、ちょっとあまのじゃくなところがなんかいいねえ。ズルしてるって言い方をしてるけど、そうじゃないと本当はちゃんと分かっている、でも素直になれない女の子がリアルだなあ。感性が若々しくないとこういう話を書けない気がする。自分は書ける気がしない……。
 お盆て地域性がある行事で、場所によっては旧盆でやったり新盆でやったりするもんだけど、迎え火に藁を焼くのは初めて知りました。どこの地方か明記されてないけど、そういうとこもあるんだねえ。そこは創作……じゃないよね?

E04 酔夢春秋
 こういう文章書けるようになりたいぃぃ。どうやったらこんなに豊富な語彙を駆使できてなおかつテンポのよい文章を書けるのでしょうか。
 永遠に幼いままの天狗は、誰も彼もが先に死んでしまうゆえに歴代の勘三郎や仲良く遊んだ子供たちのことも忘れてしまうし、いつか自分がそうやって忘れてしまうことを忘れてちさと仲良く楽しく過ごす、そのことに心躍らせるというのが、いじらしくもの悲しい。太郎坊、もう少し童子のとこに顔出してやりなよ。

E05 グラスキャンドルライト
 投稿締め切りが夏真っ盛りだから夏を舞台にした話が多い中、推理終了時を想定してのクリスマスイブの話なのだろうか。今日行ったスーパーでクリスマスケーキ予約のチラシを見かけました(どうでもいい)。
 しかしこれ、いい話と分類するんだろうか? うぅむ、人によって評価の分かれそうな感じがする。元カレと思わぬ形で再会して、かつての思い出を歌った歌なんて聴かされちゃって、またよりを戻せそうな感じの終わり方なんだけど、なんだけどっ。君のすべてを奪ってしまわないうちに、とか元カレがきれい事言ってるだけでお前の都合でお前から別れを切り出したくせに何言ってんだよ! とわたしは思ってしまいましたとさ……。いやいや、最後に涙を指で捨てる、という表現がある。着信はなくて未練はこれで吹っ切った、と言うことかもしれない。うん、きっとそうだ。若いんだから、新しい出会いがあるさ……。

E06 ことのはに
 食事処「ことのは」がどういう店なのか、「僕」が店に入る前からなんとなく分かってはいたんだけど、言葉に火を通す、という表現がいいですねえ。熱っぽく語る必要はなくて、いつもより少し口にする言葉を多くするとか、そんなちょっとしたことを教えてくれて、ついでにお腹を満たしてくれるお店かあ。ここに出てきた鯖味噌もなかなかおいしそうでした。
 ところで、奥さん浮気じゃなくてよかったね。実はちょっと期待……いやいや、疑ってたので。

E07 暁の女神と黄金の悪魔(※注)
 萌えた!めっちゃ萌えましたよ!親兄弟の仇だけど大好きなあなた……こういう話は大好物です。仇となった瞬間は裏切られた気持ちになって一度は憎むんだけど、でもやっぱり好きなの、て描写があれば更に身悶えた(そこまでいくと完全に私の趣味ですスミマセン)。さりげなく朝チュンもあるじゃないですか。二回もあるじゃないですか。イヤン。ルゥのお母さんまで人質になって皇帝の呪いのような寵愛があったというドロドロっぷりもいいですねえ。
 好きなポイント挙げただけの感想になってしまった……。

E08 女神は灰の夢を見る
 なんだか夜に寝てみる夢のような話でした。胸にあるのが心臓ではなく赤い火という現実離れした設定なのにそれ以外は地に足がついた描写なので、ネクタイを掴まれてぐいぐいと引っ張られるように読み進めてしまう。なぜ赤い火があるのか、その説明もまた不思議だなあ。確かに夢の中のような出来事だ。でもこの世界が女神の見る夢だとすると、それを語る第三者の「私」は女神の夢の中の住人てことになる割に、なんだな淡々としている。リアリティないことを聞かされたらそんなものか。しかし女神の胸元をいったいどんな偶然で見てしまったのか、その方がずっと気になるのであった。だって最後まで明かされないんだもの!

E09 The Phantom Circus, Fire Funeral
 舞台で上演される劇を見ているような、そんな話でした。少しずつ謎が明かされていくと同時に、ディックのなくしたものが明らかになっていく構成が憎い。泣ける。死の間際に見たサーカスは夢に過ぎず、でも死んでようやく夢を叶えられると同時に、泣いている孫にサーカスのチケットをそっと送るというこのラストがまた、憎い。救いはあるんだけど、やっぱりほろりとくる。
 タイトルのFuneralの意味を調べたら、「葬式」とあってなるほど。でも「責任」とか「なすべきこと」という意味もあるから、消防士だったディックの責任、という意味もかけてるのかな?

E10 朱樂院家の焼失
 お、おおおお(謎のうめき声)……禁断めいた愛ですね! 血の繋がりはない叔父と姪だけど、方や既婚者、方や養子! 奥方と容子の性格があんなだから、理弌(弌を使うとは変わっているねえ)が瞳子に惹かれ、今まで誰にも顧みられず血の繋がった叔母と妹にはさげすまれてきた瞳子が理弌に惹かれるのはやむなし、といったところであるなあ。時代がいまいちはっきりしないのだけど、脳内イメージではみんな着物を着ている感じ。自分のいいなりになっていた男が言うことを聞かなくなったから火をつけたという奥方と容子が、なんだか妙にリアルだと思った。書いたのは女性かな。
 火で焼かれて一度しに再生するという考え方って、なんか世界各地にあったような。手塚治虫の「火の鳥」は、火に飛び込んでは若く生まれ変わっているんだっけ。なんとなく思い出した。

E11 種火
 新撰組か! と気付いたのか「斉藤」が出てきてからでした(最初の「歳」は変わった名前だな、と思っていて新撰組と気付いてから土方歳三のことかと気が付いた始末)。池田屋事件に至るまでの流れを書いているってことかぁ。新撰組を題材にしているけど、その活躍を褒めるのでもなくけなすのでもなく、後のこういうことに繋がったという締めくくり。最後まで淡々と事象を追っていっている、冷静な小説という印象。でも時代小説は普段は書かない人かな。

E12 プロメテウスの崖
 かっこいいー! ごく近未来の軍事もの。水橋唯という自衛隊員の長い物語の、そのごく一部といった感じですねえ。冒頭読んで書いたの男性かなとなんとなく思い、投票結果見たら盲管さん一点集中じゃないですか。あー、たしかに盲管さんっぽい(堂々カンニング)。ディストピア風の世界観とか、ヒロインの冷静かつかっこいい感じとか(語彙不足)。唯が若い女性でありながら、一人称であっても自分を取り巻く状況を、感情をほとんど見せずまるで第三者が見ているかのように冷静沈着に描写しているあたりが、男性が書いたのかなと思わせるのです。そしてすごく現実的な感じが。政治的経済的な説得力のある背景や設定を、どうやったらこんな風にするりと入れられるんでしょうか。見習いたい。でもヘクトパスカルはhPaですよ、とひっそり誤字報告。
コメント
TITLE: SECRET: 0 PASS: ab7f260716b2dd323e61760b97cffaad  こんにちは、覆面作家企画6でお世話になりました。E11「種火」を書いた藤原湾です。  拙作に感想を頂き、ありがとうございました!  感想を頂いて、活躍を褒めるのもけなすのも出来る、一つの事件と感じてる自分に気付きました。確かに時代小説は普段書かないので、ご明察でした。どうしてそう思われたのか、お聞きしてみたいところです。
  • 藤原湾
  • 2014/10/21 10:48 PM
TITLE: SECRET: 0 PASS: 02bfd92c37f1c45a073fb243d8211055 藤原さん、返信が遅くなり申し訳ありません。 こちらこそ、覆面作家企画6ではお世話になりました! 『火種』は淡々としていながら、6000字とは思えない濃密さもありました。 時代小説を書かない人かなと思った理由を言語化するのは難しいのですが、全体的な雰囲気からそう感じました。 わたしも時代小説は書かないのにえらそうなことを言ってしまって申し訳ありません。
  • 永坂
  • 2014/10/25 5:49 PM
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